植樹フィールドは今『涵養記(三井寺編) 第1話「雨の力」』

今回より植樹フィールドの成長レポートを不定期で発信したいと思います。
ささやかな植樹の積み重ねから、次第に森へと成長してゆくプロセスをその都度記録に残しておくことは、未来にとってきっと大事なことになるだろうと感じ始めているからです。
 
タイトルは『涵養記(かんようき)』とさせていただきました。『涵養』という言葉には「自然にしみこむように、養成すること。無理のないようだんだんに養い作ること。」という意味があり、森がゆっくりと雨水を抱きとめてゆくように、読み手の方々の心にも、フイールドの出来事一粒一粒をどうか潤いあるものとして受けとめてもらえますようにとの願いが込められています。
 
第1話は「雨の力」と題してお届けいたします。
拙い文章ではありますが、長編連載の物語を楽しむような感覚で読み進めてもらえたなら幸いです。またご興味ある方は、この物語の登場人物としてフィールド活動に集まって下されば、なお幸いです。
 
フィクションのようなノンフィクション、物語のような実践活動が始まります。
主人公は自然であり、皆様おひとりおひとりです。
 

 

 

 

 

 

 

 
 
【 涵養記(三井寺編)  第1話「雨の力」 】
 
梅雨の最中7月2日、私は心地よい小雨の音と匂いを感じながら、大津市役所の奥にある山道を歩き、1~2か月に一度のペースで確認に来ている植樹フィールド(三井寺 観音堂の奥にある林地・滋賀県大津市)へ辿り着いた。連日の雨の力もあって、防鹿柵(ぼうろくさく)内の雑草はぐんぐんと背を伸ばしていた。もちろん、みんなで植えた苗木たちも雑草たちの成長に刺激を受け、それぞれがそれぞれの境遇にきちんと反応し、日の光と快適な空間を求め、縦へ横へと命を開く。
 
街中でただ生活しているだけだと、つい疎ましい扱いをしてしまいがちな雨。でもこうやって苗木たちを目の前にすると、雨の力は本当に必要不可欠なものなんだということを身を持って感じる。2020年3月20日、あの日集まったみんなで植樹をしてから1年と4か月が過ぎた。去年の夏には、連日の炎天下で苗木が枯れやしないかと気になり、ペットボトルにたっぷり入れた水を両脇に参上したことも。森づくりの専門性はなくとも、乾いた土に水をあげることくらいなら誰にでも出来る。淀川の最下流域に住む私でも、大津の三井寺までなら半日で往復できてしまう。そう、たった半日で。
 
淀川流域はおもしろい。地形的ななだらかさ、過ごしやすい気候、交通アクセスの利便性、大都市を含んだ活気、関西特有の人間味あるフランクな地域性。淀川流域は、流域間でつながり合える絶好のフィールド。だから私はこのフィールドに腰を据えることを決めた。潜在的な可能性に満ちているこの淀川流域には『流域再生の雛形』のひとつになってもらいたい。
 
そんな淀川上流域に生きる苗木たちは、成長の速い雑草たちにも炎天下にもへこたれず、今日も力いっぱい命を続けている。雨にも風にも負けないどころか、雨からも風からも力を浴びながら。
 
 
【参考文献】
・『firstと森』
 三井寺 みんなでつくる みんなの森(2020)アースフォレストムーヴメント
https://earth-forest.jp/news/blog/first%e3%81%a8%e6%a3%ae/
 
・『春の小芽話(おがわ)』
 三井寺 みんなでつくる みんなの森(2021)アースフォレストムーヴメント
https://earth-forest.jp/news/blog/%e6%98%a5%e3%81%ae%e5%b0%8f%e8%8a%bd%e8%a9%b1%ef%bc%88%e3%81%8a%e3%81%8c%e3%82%8f%ef%bc%89/
 
【投稿者】
 松田 卓也(アースフォレストムーヴメント)
 
【投稿日】
 2021年7月3日