マザーアースデイ 琵琶湖から広島へ

「自然と調和した音楽ホールとアートの森を作りたい。」
  渡邉由紀子
  (NPO法人 Heart of Peace ひろしま 事務局)
 
 
2018年琵琶湖から、2019年広島へ。
竹生島から厳島へ・・・弁天様のご縁に導かれるように開催されるマザーアースデイ
厳島神社の御祭神は宗像三女神と呼ばれる美しい三女神です。
 
神話によると三女神は天照大神から「海の道を守るように」という神勅を受けてこの地上に降り立ったと言われています。
島国である日本で海の道を守るというのは、この国の平和を守る、ということなのかもしれません。
 
平和都市と呼ばれる広島の中心部を悠々と流れる太田川。
実は太田川はその昔の度重なる災害によって出来た川である、という話を私が聞いたのは広島に暮らし始めて優に10年以上が過ぎた頃でした。
古来、太田川の上流は有力な砂鉄の産地で、森を切り開いてタタラ場を作り、砂鉄を採集するために大量の土砂を排出していた為に、しばしば大規模な水害を引き起こしていたようです。
全てを押し流す大きな水の流れがやがて川となり、水と一緒に押し流された土砂が堆積し、太田川下流域では今日、日本でも有数の三角州地帯を形成しています。
中世になるとその三角州に広島城を築城され、築城の際は太田川を水路として上流域から木材を運搬し、太田川を天然の堀として設計したのだそうです。
 
森の恩恵を受けて広島藩は繁栄し、
森の持つ圧倒的な力に恐れおののきながら広島は発展してきました。
その広島に、昭和20年8月6日。
悲劇が起こったのでした。
 
「70年間は草木も生えない」と言われたあの日から70数年を経た現在。
広島の街は緑で溢れ、被爆の3日後から運転を再開した市内電車は今でも市民の足として広島市内の交通を支え、世界中から旅行者が訪れ広島の破壊と再生の奇跡に心を寄せ、祈られる姿がみられます。
 
広島には世界中から様々な祈りの気持ちが寄せられ続けたのだと折に触れて感じます。
もしかしかしたら広島は、世界でいちばん、祈りの気持ちが向けられてきた場所なのかもしれません。
 
その広島で、私たち「Heart of Peace ひろしま」は音楽を通して平和を伝える活動を行なっています。
太田川の源流域である安芸太田町で開催している「あきおおた国際音楽祭」は来年で10回目を迎えます。
 
音楽には不思議な力があります。
人の心の根元の綺麗な綺麗な気持ちを呼び覚ます力が。
 
美しい音楽で心が満たされた時、私は思わずにいられません。
命を育む豊かな森を
命を守る美しい海を
豊かなままに美しいままに後世に手渡していきたいと。
 
あきおおた国際音楽祭を続けるうちに、ぼんやりした思いだった「音楽の持つ力」を確信に変えて、
被曝建物である旧日本銀行広島支店を会場に音楽だけでなく広くアートを通じて平和を発信する「平和と美術と音楽と」や、
広島から世界へと活動の幅を広げてヨーロッパツアーを行なった「広島から平和の調べを
など、活動の幅を広げていくうちに、私たちに 一つの夢ができました。
 
「自然と調和した音楽ホールとアートの森を作りたい。」
 
緑溢れる森のような公園とその向こうに広がる水鳥が訪れる海。
森と海を、光と風を感じるそんな場所で、上質の音楽で心身を満たせるような。
偉大なるアートを前に自らのうちに深く問いかけるきっかけになるような。
訪れた人の心をやわし、未来を担う若者の感受性と可能性を育み、そこに住む人の誇りとなるような。
 
音楽とアートと自然が、一体になった場所です。
 
 
森を森のまま、自然を自然のまま、太古の昔そのままの手つかずの自然に戻すことは難しいかもしれません。
 
だけど、削られ、切られ、掘り起こされ、それでもなお私たち人間を育んでくれている自然に対してできることの小さな一歩は、そこに感謝の気持ちを持ち、喜んで生きることなのではないかと、私は思うのです。
 
だから。
復活と再生の歴史を持つ広島で。
世界中から祈りの届けられる広島で。
森によって育まれ形作られた広島で。
 
広島から平和の調べを、美しい音楽に乗せて響かせたいと
偉大なるアートに寄せて発信したいと思うのです。
 
 
【投稿者】
 渡邉由紀子
  (NPO法人 Heart of Peace ひろしま 事務局)
 
【投稿日】
 2018年10月31日